雑感(税理士受験生に捧ぐ)-つれづれなるままに税理士 Vol.14-

8月といえば、税理士受験生にとっては甲子園よりも大切な「税理士試験」の時期です。
受験生の皆さんは、この1科目2時間の試験のために、365日をかけて準備されてきたことと思います。

私自身も、いわゆる「試験組」の5科目合格者ですので、正直、5勝10敗以上の戦歴です。はっきり言って負け越しています。
でも、いいんです。何回負けても、1回受かればそれは自分のもの。税理士試験も、大学受験も、高校受験も、簿記検定も同じです。落ちた回数なんて、数える必要はありません。


税理士になるには?

税理士になるには、以下のようなルートがあります:

  • 国家試験に合格する(試験組ルート)
  • 国税庁で一定の実務経験を積む(OBルート)
  • 公認会計士など他の資格から登録する(他資格ルート)

私は、「試験組」として税理士になりましたので、ここでは少し試験制度について触れたいと思います。


試験組の2つのタイプ

試験組には、主に以下の2タイプがあります:

① 5科目合格組

  • 簿記論・財務諸表論(会計2科目)
  • 税法科目3科目(所得税法・法人税法・相続税法など)

以上の計5科目に合格することで税理士試験合格者となります。4科目以下の合格者は「科目合格者」と呼ばれ、毎年一部ずつ合格を目指します。

② 3科目+大学院免除組(通称:院免、マスター、院ルート)

  • 会計2科目+税法1科目に合格し、
  • 大学院で税法2科目分の免除を受けることで税理士登録が可能になります。

大学院を先に修了し、その後3科目合格してもOKです。

(※5科目と3科目のメリット・デメリットは、また別の機会に書きます。)


合格率の実態

税理士試験は、毎年の合格率を見ると一見「それほど難しくないのでは?」と思ってしまうかもしれません。なぜなら合格点「60点」だからです。

ですが、これは見かけの数字であり、実態はかなり違います。実際は相対評価の競争試験です。6割以上を取っても不合格になることがあります。実態は次のとおりです。

・会計科目:10〜20%

・税法科目:10〜15%


試験の恐ろしさと現実

この試験の恐ろしさは「科目合格制」であることです。ほとんどの受験生がまず会計科目から取りかかり、合格してから税法科目に進みます。

  • 独学で合格できる人は私の知る限りゼロ
  • ほとんどの人が専門学校・予備校に通学
  • 日商簿記2級合格者が1年以上本気で勉強して、会計科目に合格(会計科目合格率10%〜20%程度)
  • その会計科目合格者の中からさらに税法3科目に合格した人が税理士試験合格となる(税法科目合格率10%〜15%程度)

たとえば、日商簿記2級を持つ100人が受験を始めた場合

  • 約20人が会計科目を合格
  • その中で税法3科目に合格できるのは、2〜3人程度

一部の資格情報サイトや通信講座では「税理士試験合格率20%!」「働きながら5年で合格可能!」と謳われていますが、これは誇張です。現実には、5科目合格できる人は2〜3%程度。「狭き門」であることを知らずにスタートすると、途中で後悔することもあります。


私の体験

私は、働きながら約15年受験を続けました(うち5年はブランク)。
本気で勉強したのは約10年。それでも5科目に合格できたのは、運と実力と根性のたまものです。

正直、合格できないまま撤退する人も多く見てきました。
税理士試験は、合格者が不合格者の屍の上に立つ試験だと思います。


それでも挑戦する価値はある

ここまで少しネガティブなことも書きましたが、それは「時間とお金」という大きなコストを無駄にしてほしくないからです。
だからこそ、覚悟をもって受験に臨んでほしいのです。

ただ、苦労の末に合格した時の達成感・充実感・全能感は、他に代えがたいものがあります。私は最後の科目を合格したとき、嬉しすぎて過呼吸になりそうになったのを今でも覚えています。

そして合格後の人生も大きく変わります。

  • 会計事務所で税理士として働く
  • 企業で税務・経理の専門家として働く
  • 独立開業して働く
    選択肢が広がり、一般的な会社員より高い所得水準が期待できます。

受験を検討している方へ

  • 合格を目指すなら、狭き門であることを理解し、計画的に。
  • 長期化しそうであれば、どこかで撤退も選択肢に。
  • 会計科目だけでも十分に価値はある。

自分のキャリア、家庭、ライフプランと照らし合わせて、よく考えて受験してください。


最後に:受験生の皆さんへ

今年の試験は、令和7年8月5日(火)から3日間にわたって行われます。
試験本番で最も重要なのは、ケアレスミスをしないことです。

あとは、「神のみぞ知る」世界です。
悔いのないよう、全力を尽くしてください。
応援しています!


投稿者プロフィール

澁谷 正
澁谷 正